裏TUTアドベントカレンダー2023 の11日目の記事です。前日の記事はゆなさんの「自己防衛の方法についてメンタルカスな人が語ってみた」でした。私の自己防衛方法は「知り合いネットワークを狭く保つ」です。というのは嘘で、単にコミュニケーション能力がなくて友達作るのが億劫なだけです。自己防衛するほどのメンタル攻撃がされていないとも言えます。


さて、残念なことに哲学の話をします。なぜ哲学の話が残念なのかというと、匿名化が進んだインターネットでは無責任な言説しか飛び交わないからです。私も例外なく無責任なことしか書きません。さらに残念なことに、哲学専攻でもないにも関わらず、挑発的な内容を書き散らかします。そんな本記事の責任を取ってくれるのは、『方法への挑戦』(英: "Against Method") という本の著者である、既に亡くなられた哲学者ポール・ファイヤアーベント (Paul Feyerabend) です。私の意見ではなく、あくまで彼の意見であるということを強調しておきます。故人を盾にしたところでさっそく本題に入ります。

The philosopher Paul Feyerabend in Berkeley.

科学と科学でないもの

Science (科学) の語源を知っていますか。色々説はありますが、Knowledge (知識) を意味するラテン語から来ているとされています。Science という言葉が仮説と検証を繰り返えす積み上げ式の自然物理科学としての意味を持ち始めたのは19世紀中頃からです。元々は、非科学的であると呼ばれるものはありませんでした。なぜなら、神学でも錬金術でも占星術でも、とにかく知識の集合体として認識できるものであればなんでも科学と呼ばれていたからです。

20世紀に、観測と論理的推論によって得られた知識のみが事実として認められるという論理実証主義が流行りました。エビデンスを明らかにすること、そしてそこから導かれる推論の体系を豊かにすることによってしか科学は発展しないという主張です。科学と科学でないでもの、つまり疑似科学を切り分ける思想であるといえます。

Anything Goes (なんでもあり)

ファイヤアーベントは、この論理実証主義に対してもっとアナーキーな視点を取り入るべきだという批判をしました。さらには、「科学は本質的にアナーキスト的な営為である」とさえ言っています。

よく分からない人も多いと思うので、『方法への挑戦』で挙げられていたガリレオ・ガリレイの一例を紹介します。以下は抜粋したものです。(ちゃんとまとまってないです)

ガリレオは科学的に間違っていた。望遠鏡という、誰も見聞きしたことのない得体の知れない器具から見える景色が、人間の目で見える景色よりも正しく空を表していると理由もなしに言い張った。科学的コンセンサスを無視して都合の悪いデータは省略するし、コペルニクスの論を裏付けるような証拠しか提示しない。デカルトにさえ「話がずっと脱線していて、立ち止まって関連する事象について検証していない。ある特定の事象が起こる理由を原理から導くことをせずにでっち上げている。」と言われる始末である。

ここでのファイヤアーベントの主張は、天動説が正しいということではなくて、疑似科学的であると言われるような突拍子もないアイデアが新たな理論の開発に寄与する可能性があるということです。"Anything Goes" というのはやや挑発的な言葉であり、誤解を招く表現ですが、確立された理論とは別の非科学的な発見が科学の前進に役立つ可能性を指摘しようとしているわけです。これが、ファイヤアーベントの掲げる認識論的無政府主義 (Epistemological Anarchism) の主張です。

中世末期ヨーロッパで宗教改革の火付け役となった神学者マルティン・ルターは、原理主義に立ち返って当時のキリスト教会体制を聖職者として内側から批判しました。ルターは保守的な聖職者から嫌われていましたし、ファイヤアーベントも Nature 誌に The worst enemy of science (科学最大の敵) と書かれるほどでした。アカデミア出身の物理学徒として内側から科学界の意識を変えようとしていたようですが、その試みはいまのところ失敗しているようです。


『方法への挑戦』をしっかりと読み込めておらず、ファイヤアーベントのメッセージが伝わりずらい短い記事になってしまいました。本のレビューっぽいことを書くときはちゃんと読んだ本についてやるべきですね。時間あるからまあ読めるだろうとか考えていたので失敗しました。

私はまだ研究者と言える立場ではないので、彼の指摘する排外的な科学至上主義がどんなものなのかを体系的に理解するまでには及んでいません。これから少しずつ明らかになってくる、もしくは間違っていたと分かってくるのかなと思いながら、大学に通っている次第です。

明日は、Fukusukeさんによる「1年って早いよねって話!」です。

追記

読者がコメント・リアクションできないのもあれかなと思ってツイートしました。X を見るときは Nitter を使っていましたが、仕様が変わってログインしないと見れない時期があったのでアカウントだけ作っています。今は普通に Nitter 使えるのでアカウントを覗きに行くのは今回だけになるかもです。コメント機能、、、実装してみようかな?

参考文献